これは非常にマズい。


両脇で天の様子を窺う二人を交互に見比べる天は一人そわそわしている。



それもそのはず。

同じ高校の人間ということは、女子高生姿の天を見られる可能性がかなり高い。



「……バイト辞める日も遠くないな」



こう言って勝ち誇ったように笑う皇楽が憎らしくて仕方無い。



「絶対大丈夫だしっ! だいたいっ、一年か二年でしょっ? だったら……」


負けじと皇楽に噛み付くがどこか歯切れが悪い。


大丈夫だと胸を張って言い切るには不安要素が多すぎる。



下唇を軽く噛みながら黙り込んでいく天の元に、



「よろしくお願いしますっ。先輩方っ」



人懐っこい笑顔で近付いてきた涼希が声を掛けた。



「おまえ……何年だ?」



さり気なく天を隠すように一歩前に出た皇楽に、



「ウチの学年じゃないよね。見たこと無いし」



それに続くように並んだ慶斗が背中に隠した天に立ち去るように手で促した。