「天っ。好きな人の前なんだからヨダレくらい拭いて……」



斜め前から振り向いた絵那がわざとらしく耳元で大きな内緒話。



「はぁっ!? な、な、何言ってんのっ!? 高原なんか好きなワケないでしょっ!」



思わず勢いで全力否定した天に皇楽の顔が変わる。



「んなのこっちから願い下げだっ。巨女っ」



売り言葉に買い言葉で返した皇楽の発言は、



「わたしだって主……アンタなんて好きじゃないもんっ!」



慶斗と絵那の願いも虚しく更に状況の悪化を招く。



放っとけば無限に続きそうな小学生並の言い合いに、



「……体ばっかりデカいガキだな。二人とも」


「ふふっ。ホントだねぇ」



口元しか笑っていない慶斗に微笑む絵那は小さく呟いた後、呆れたようにため息をついた。