授業も残りわずか数分の六限目。



とうとう限界が来たのか。
天のハニーブラウンが皇楽の机に侵入しつつある。



思えば図書室でサボっていた天を見つけた時。


あの時触れた天の髪の感触も不意に引いた手も何とも感じていなかった筈なのに……。



教科書を捲ろうと動かした指先に緩い癖毛が触れ、女の子を意識している自分。



なのにそれを素直に認めきれない。



授業そっちのけで皇楽の心の葛藤が始まったのも束の間。



「見てないで起こしてやれよ」



斜め後ろから聞こえた声で意識を戻せばいつの間にか授業は終わっている。
腹立たしい程の爽やかな笑みでこちらを見ていた。



どうやら無意識にも天を見つめていた自分にわざわざ大きなお世話をしに来たわけだ。



「……起きろっ。ヨダレ女!」



慶斗の大きなお世話が裏目に出たらしく皇楽の手はハニーブラウンをひっぱたく。



「痛っ!! 何すんのっ!? バカッ!!」



それで飛び起きた天が噛みつくようにまくし立てるも皇楽は目もくれない。