「僕も最初は意味がわからなくて出さないでおこうと思ったよ。でもね、これが入っていたんだ」
視線の先には小指のリング。
「それは?」
「ピンキーリングと言ってね、小指につける指輪なんだ。雪ちゃんはピンキーリングの意味をしってるかな?」
そんなもの聞いたことない私は正直に首を横に振った。
「ピンキーリングは、右手につけると"幸せを掴む"、左手につけると"幸せを逃がさない"っていう意味になるんだ。
それを知った時に思ったんだ。未来は僕に、自分のことにケジメをつけて、前を向いて生きて欲しかったんじゃないかって」
遥さんはとても清々しい顔をしている。
「遥さんは、その人と出会えてよかったですか?」
「うん」
「幸せですか?」
「うん」
「大好きな人はいないのに?」
私だったら、そんなの耐えられない。
葵がいなくなったらきっと、私は壊れてしまう。



