相当嬉しかったんだろうな…。


「結婚してたんですね。奥さんがいるなんて知らなかった」


だって、1度たりとも奥さんの話を聞いたこともなかったから。


「ううん。今は独り身」


「え?結婚したんですよね?」


「したよ。したけど…」


遥さんは言いずらそうに俯いた。


「ガンが再発して、再び入院することになった。

でも、どんなに辛くてもあいつはいつも言ってた。

"私の名前を別の読み方にすれば、みらいなの。だから、私にはみらいがある。そう信じたいんだ"って。

僕はそんな未来が大好きだった。

でも……でも……」


私はこの時、遥さんの涙を初めて見た。


「あいつは亡くなった」


運命は、なんて残酷なんだろう。