でもその「何か」はわからない。


「どーしたの?私でよかったら聞くよ」


「でも、雪も辛くなる…」


その言葉に思わず頬が緩んでしまった。


自分が辛い時まで人のことを考えられるなんて、やっぱり葵は優しい人だ。


「私のことなんて気にしなくていーの」


話す気が起きたのか、私の向かい合う形に座り直した葵。
その目からは涙が出こぼれ始めた。


「葵?」


葵が泣いているのを始めて見た。


ほんとに何があったの?


「もうダメなんだ」


「ダメって何が?」


「……移植」


「え?」


「心臓移植はもう出来ないらしい。大手術に耐えられる体力はないんだって…」