思い込むこともやめた。
これからは堅実に生きていこう、そう思えた。
「……俺さ」
私の話を聞いた葵は、何を語るんだろうか。
「病気になって、自分が一番不幸だと思ってたんだ。でもちがった。俺よりもずっとずっと、雪の方が辛かったんだな」
「そんなことないよ。だって女の子は体さえあれば、きっとどこに行ったって生きていける。だから女に生まれたぶん、葵よりも幸せだと思うんだ」
例えば私が男だったとしたらもう生きてはいないだろう。
女っていうだけで生きていける世界に生まれたことも幸運なんだと思う。
私は葵より幸せだから、その幸せを葵に分けてあげたい。
「雪は、強いな」
そう言って、ニカッと笑った。
その笑顔を見た途端、
……とくんっ。
さっきのとは違う意味で心臓がなった。
これはきっと……。



