それが、援交に手を出した一つの理由でもある。


「お父さんはすぐに恋人を作って、私を置いて家を出ていった。お金だけ置いて行ってくれればよかったんだけどね。現実はそんなことなくて。私は生きるために自分でお金を稼がなきゃ行けなかった。
だから、手っ取り早い援交を選んだの」


話をしている間、私はずっと下を向いていた。


相変わらず葵の方から視線を感じる。


顔はあげられなかった。


「こんなこと言っていいかわからないけど……他に方法はなかったの?」


私は葵の悲しそうな声を嬉しいと思ってしまった。


こんなにも心配してくれる人がいるなんて…。


こぼれ落ちそうな涙をぐっとこらえた。


「他の方法もあったのかもしれない。でも私は援交を選んだ。誰かに必要とされてるんだって感じたくて……。でもわかってる。必要とされているのは私の心じゃなくて体なんだって」


いつだってそう。


やる前もやってる最中も、ほんとに大丈夫かなんて聞かれない。


道具のように扱われるばかりで、優しさや愛なんて感じたことはなかった。


「男の人には私の心なんて関係ない。体さえそこに存在していれば、あとはどうでもいいんだと思う。
でもたとえ一瞬でも、誰かに必要とされることで精神を安定させられたから…。
私はこれでいいんだって思ってた」


でもそれは違うんだって、葵に出会って初めてわかったよ。