「…いいのか?知られたくないんだろ」


やっぱり葵は優しい。


知りたいという好奇心がない訳では無いだろう。


でもその思い以上に私の思いを優先してくれる。


葵はこう見えて、誰よりも優しいのかもしれない。


「葵ならいいの。あと、本当は誰かに聞いてほしいのかもしれないから」


「そっか」


こうして私は話し始めた。


今までに誰にも言ったことのない事実を。


「私はね、お母さんと同じ道を辿ってるの」


「同じ道って?」


「お母さんは結婚する前もしてからも、援交をしていたらしい。苦しい家計を助けるためにね。そんなことお父さんは知らなかったみたいで、発覚した途端に離婚。
まぁ当たり前だよね」


私の乾いた笑いが病室にこだまする。


葵が苦しそうに私を見つめるけど、その目を見つめ返すことは出来なかった。


「私はお父さんに引き取られたけど、お母さんのことも好きだったんだ。自分を犠牲にしてまで家族を守ろうとするなんてすごいと思った。たとえそれが世間に受け入れられない方法だとしても、私には立派に見えた」