「葵のことについて少し話そう」


思いもよらない話題に、遥さんの顔を見た。


遥さんの目線の先には地面。


私と目が合うことは無い。


「葵はね、心臓の病気なんだ。ずっと入院しているけど容態が思わしくない」


心臓…か。


人間が生きていく上で1番大事な部分。


止まったらもうこの世界にはいられない。


でも葵は、そんな事情を抱えた人にみえなかった。

「葵は病人に見えないほど元気ですよ?」


「葵自身だってわかっていないんだ。自分が今どういう状態かなんて。
それに、葵の病気はストレスや少しの運動だけでも進行していく」


突然告げられた真実。


私はそれに、なんて反応すればいいの?


分からずにただ黙っていた。


「お願いだ。これ以上葵を心配させないでほしい」


遥さんに頭を下げられた。


「別に私は心配させてなんて…」


「昨日葵が倒れた」


……え。


葵が倒れた?