私は下を向いてるからわからないけど、葵の表情はいいものとは言えないだろう。
しばらくしてから葵がゆっくりと口を開いた。
「俺には、好きな人いるから」
……うん。
知ってる。
誰かもわかってる。
私が分かってるってこと、葵もたぶん分かってる。
でも言わない。
それが暗黙の了解なんだ。
「そっか」
それだけ返すと会話は終わった。
少し顔をあげて葵の方を見ると、視線が私に向いていた。
出会った時と変わらない純粋な目。
汚れてる私を、そんな目で見ないで。
ドキドキしちゃうから。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…