風が生温かった。

冷や汗が背中を流れる。


まさか、まさか。

そんな筈はないと自分に言い聞かせる。




見たくない光景。

それなのに、横たわる影に近寄る総司から目が離せなくて。









「…目を、開けてよ」

震えた掠れた声。

栗色の長い髪で隠されたその青白い顔はどんな表情をしているのかわからない。

横たわる影の、その、見覚えのある、その人。



「…嫌、嫌だ…っ」





新選組八番隊隊長 藤堂平助 永眠



紅い闇の中で、泣き叫ぶ声と、生温い風の音だけがこだましていた。