「…土方さん、どうしたんですか?」


「…いや、あいつを一人にしないでやって欲しいって思っただけだ。風邪ひいて、更に寂しがり屋になってるからな。ははっ」

土方さんは笑う。


でも本物の笑顔じゃない。
どこか、無理しているのを感じる笑顔だ。


「…どうした、総司に粥持ってってやらねぇのか?」

土方さんはとっくに私の腕を離していた。


もう土方さんの弱いところは見えない。いつも通りだ。


「あ、そうだった。じゃあ、失礼します!」

私は先程の土方さんの笑顔に違和感を覚えたが、粥を持っていかなければという使命を思い出し急いで踵を返した。


















桜夜の姿が見えなくなると、土方は沖田の部屋の方へ視線を向けた。

そして悔しそうに歯を食いしばり、ぎゅっと拳を握った。

「…総司は…」

掠れた弱々しい呟きは秋の空に消えた。