その後、私━━睦月桜夜はおき…じゃない、総司のお粥を取りに食堂に向かっていた。


廊下を歩きながら先程の一連の出来事が脳裏に浮かぶ。

(…二年半の溝を埋めたかったんだよね…でもでもでも!頬にとは言え、き、キスとか…呼び捨てとか…はわわわ)

「…ほう。何かあったな」

聞き覚えのある低い声が目の前からしたので顔を上げると土方さんがニヤリと笑って立っていた。

(…事の元凶は土方さんだっ…!)

私は土方さんを睨んだ。

でも、嬉しいような、恥ずかしいような複雑な心境だったので睨んだとはいえ憎しみは込められてはいない。

それを感じたのか土方さんは更に意地の悪い笑みを浮かべる。

「なっ、何も無いですから!じゃあ、私は用事があるので!」

そう言ってすれ違おうとすると土方さんに腕を掴まれた。

その力が弱かったので、どうしたものかと土方さんを振り返ると一瞬、悲しそうな顔をしていた。

でも、直ぐに優しいお兄さんのような顔をして、いった。

「…総司のこと、頼むな。」

「え?」

土方さんが、そんなことを言うなんて。
何かあったのだろうか。

「…ああ、いや。だって恋人だもんなあ?」

土方さんは取り繕うように意地悪な顔に戻って言った。

それがあまりにも不自然で、心配になった。