「…けほっけほっ」


ああ、桜夜さんの前で咳したくないのに…。



「沖田さん!だっ、大丈夫ですか!?」

桜夜さんが心配そうに私の顔を覗き込む。



なんだか久しぶりに見た感じがするな。そんな顔。
…距離がある。

近くて、遠い…。


「…総司。沖田さんじゃなくて、総司って呼んで。
なんか、距離を感じるから。…けほっけほっ」

「おきっ…そ、そそ総司さん!」

「っ!?けほっけほっこほっ…」

桜夜さんは私の背中を撫でてくれる。
それでも咳は治まらない。

病気のせいじゃない。

(総司さんって…どこの奥さんだよ…)

きっと、桜夜さんのせい。



「ちょ、まって?総司って呼び捨てにして…けほっ…じゃないと咳が治まらない…けほっけほっ」

「ええー!?それはどゆことですかっ!?え、じゃあ…そそそそ総司…」

なんだか、そが無駄に多いけど呼んでくれた。

「総司さん」が奥さんみたいな呼び方で恥ずかしいって言うのは、絶対言わない。秘密にしよう。


「へへっ…それがいいな。」

なんだか、二年半の溝が埋まった感じがして嬉しかった。