「…それはどういうことですか、土方さん」

私は知らずのうちに土方さんを怪訝な目で見ていたのだろう。

土方さんはさらに意地悪な笑みを浮かべた。

その顔があまりにも綺麗過ぎてゾッとする。

こんなに意地悪な顔が似合うのは、土方さんだけなんじゃないだろうか。


「…これ、だ。」

土方さんは自分の右手親指を唇に当てた。


「え、土方さん…まさか…口移しで…?」


私は全身の血の気が引いていくのがわかった。…寒い。カタカタ震え出す。



「…阿呆。俺じゃねえわ。」

土方さんは苦笑した。


え、じゃあ誰が?(というかやりそうな人いないけど)



「桜夜だよ。」

「は…?」

私があまりにも気の抜けた声を出したので土方さんは腹を抱えて笑い始めた。


私は混乱していた。

「えっ、ちょっと、土方さん?あまり私をからかわないでください?」

「からかうも何も、事実なんだからな」


(嘘だ…)

体が熱くなるのがわかった。顔が、焼けるように熱い。


「ははっ可愛いやつ。…まあ、桜夜の事想うならさっさと体治せよ。じゃあな。」



私はただ呆然と土方さんの背中を眺めるしか出来なかった。











「沖田さん?」

「あ、ああ、おかえりなさい。」

いつの間にか桜夜さんが部屋に戻ってきていた。


「…どうしたんですか?熱があるんですか?顔が真っ赤ですよ?」

「えっ」

気づかれてしまった…。

「さっき土方さんとすれ違いましたけど、何か言われたんですか?変な事とか」

桜夜さんは首を傾げる。

土方さん…桜夜さんにまでそんな認識されてますけど…。


「ええ。…あの…桜夜さん。」

「はい?」