剱聖伝

《殺す…殺す…殺す…》


念仏のように唱えながら


山小屋の外をうろついて


いる。右手にラキの髪を


鷲掴みにして、地面を


引きずっていた。意識が


無いのかピクリとも動かな

い。ベルゼ兵は左手の中を

見つめ、何かを呟いた。


すると小さな炎が出現する

…それを山小屋に向かって

投げる。瞬く間に炎が


山小屋を飲み込み、夜の闇

を明るく照らした。


その様子を近くの木陰


から覗く者が居た…


クロードである。


《あいつ…あの時の


やつか…あの傷で動ける


とは》胸の傷はかなり


深いはずだった。


《こりゃ…まずい》


状況はかなり切迫して


いた。