剱聖伝

《ツマラン》

サタンが少し羽を動かすと

バーミリオンの体が吹き飛

ぶ。


大地に転がり横たわったま

ま動かなくなる。


《届かぬ…少しも》


天を見上げバーミリオンが

呟く。どれだけ足掻いても

サタンに傷一つ与える事


すらできない。


やがて天が闇に覆われる。

バーミリオンの上にサタン

が近づきこう言った。


《サヨナラ…バーミリオン

》サタンの指先が向けられ

る。


《…シーリア》


バーミリオンの瞼が閉じ、

覚悟を決めた時、閃光が放

たれた。


暖かい…まるで全ての業か

ら解き放たれた感覚。


気付けば目の前にシーリア

が立っている。


バーミリオンは手を伸ばし

た。しかし、シーリアの瞳

は哀しみを讃え首を横に振

る。


《…許されぬか…》


シーリアが光の方へと指を

指す。そして寂しそうに笑

った。


《…何を望む……》


バーミリオンの瞳から


涙が溢れる。


やがて光の中に意識は溶け

ていくのだった。