剱聖伝

《何…あれは…》


セイランの瞳が恐怖で縁取

られる。


おぞましく、まがまがしい

までの邪気。


見るだけで魂を汚されて


いく感覚。


《…本体に魂が戻ったわけ

じゃな》


ハイゼルが震える体を必死

に抑える。


悪夢だった。目の前のそれ

は既に人が感知できる領域

を越えている。


しかし、本能だけは正確に

目の前の者に対して危険で

ある事を告げていた。


《…あいつだけは許さん》

ただ、バーミリオンだけは

まるで動じる事なく闘志を

たぎらせていた。


《恐れ、動けぬ者は去れ》

バーミリオンのその言葉に

幾分かの怒りが湧き、少し

の恐怖による硬直は和らい

だ。


だが、いつまでもこちらの

万全を待ってはくれず、


魔王サタンが動きだした。