剱聖伝

逃げろと誰かが言う。


逃げる…何故!?


逃げなければいけない相手

…あの鋭くとがった物で


傷つけるのだ…誰を!?


自分と……母様を!?


幼いながらに危険を感じた

が、どうしていいかわから

ず立ち尽くす。


相手はあと少しの所まで


迫っていた。



そして…


《…あっ……》


少年の瞳が見開かれる。


艶やかなブロンドの髪…


何もかもを包み込むような

優しい瞳…


少し香る華の匂い…


少年はわからなかった。


どうして自分が抱きしめ


られたのかを。


その時はわからなかった…

何故…泣いていたのかを。

ただ、目に残るのは真っ白

なドレスが赤く染まる光景

。音の無い世界に取り残さ

れた感覚。


そして…………