剱聖伝

《…遅い》


ラキが荷馬車の中で落ち着

きなく足を揺する。


もうクロードに言われて


いた期限はとっくに過ぎて

いた。それでも置いて出る

わけにもいかず、待って


いるのだが…。


いつまでもここに居る事も

出来ない。


ティアはというと、顔を


伏せ、心配そうな面持ち


で唇を噛んでいた。


《ティア…どうする!?》


クロードに言われていた事

を思い出していた。


もしオレが戻らなければ…

そう言って貰った紙。


ティアもわかっていた。


それでも…。


《私…少しまわりを探して

きます。もしかしたら近く

まで来てるかもしれません

から》


《……やめなよ》


探しに行こうとするティア

を止めた。


何かあったのだ…


戻って来れない何かが…


しかし、それを認めたく


ない。それはわかっていた