《ラ…キ…逃…げ……て


今…すぐ…ここか…ら》


母がかすれるような声で


それだけを絞りだす。


《え…何言ってるんだよ…

母ちゃんを置いていけるわ

けないだろっ!!》


駄々っ子のように首を振る

。母はとても哀しく虚ろな

瞳に、涙を溜めていた。


そしてまた声を振り絞り出

し、口を開く。


《ラキ…お願い…ここは》

(ザクッ!!)


鮮血がほとばしる!!


母の胸に冷たく光る槍が刺

さっている。


口をパクパクさせ、我が愛

息子を見つめ、やがてその

瞳が生気を失い静かに崩折

れた。


《…何…が…》



闇が包み込む…深い傷が


少年の心にえぐられる…。


《うわぁぁぁぁぁぁぁぁー

ーーー!!!》


《なんだ…なんだ…なんだ

……》


受け入れがたい現実に脳が

ショートし、またも意識は

暗い海の中へと消えて


いくのだった……。