剱聖伝

大きくうねると、そのまま

炎にぶつかり、大量の


水蒸気が立ち上った。


《な、何者!!》


突然の来訪者に戸惑い


声を荒げる。


蒸気で視界の悪い中に、


肩で息をして立つ者が


居る…ティアであった。


《ティア!?どうして…》


クロードの目が見開かれる




《ごめんなさい…火の手が

上がった後、ベルゼ軍が山

小屋の方へ向かうのが


見えて…それで私…》


下をうつ向く。


ティアの気持ちも解らない

ではないが…これで


状況は更に悪化した…


自分一人ならなんとか


逃げる自信もある…が、


ラキを抱えたセシルドと


接近戦に弱いティアを


守りながら脱出する方法


などあるわけ……あった。

一つだけある。


あるにはあるが…


《あれをやるとオレは…


んな事も言ってられない…

か》


何かを決断したクロードが

セシルドを見る。


《バディスを…やる》


それを聞いたセシルドの


顔が苦渋に歪んだ。