「とりあえず結婚しようと思って」というような話になった時、反対する人は誰ひとりいなかった。

だからわたしたちは式も挙げず、うちの籍にあきひろが入っただけだった。

というのももし結婚をしなければ、アメリカに住んでいる、会ったこともないあきひろのお父さんという人がやがてあきひろを引き取りたいと言ってくる可能性があったからで、

もしそれがなかったらわたしたちはその時にわざわざ結婚なんてしなかっただろう。

そのくらい生活はなにも変わらなかった。

取り立てて盛り上がりもなく、面白みが加わるわけでもなく、ふたりでそのうち近所のどこかに越そうかという案も出ながら、結局わたしはわたしの家に両親と住みながらぶらぶらとしていて、

あきひろはアルバイトをしながらおじいさんと二人で暮らしているままだった。