私に紫奈と名付けたのは母だった。
高城紫奈(タカシロ・シナ)は、どこにでもいる普通の十九歳だ。たぶん。
「なんであんたも一緒に来るの?」
部屋を出て、一階にあるリビングに向かう私の後ろを、男がついて歩く。それさえも気に入らない。
だけどそんな私の気持ちなど関係ないと言うように、男は口を閉ざして言い返すこともしない。
治まることのない苛立ちを感じたまま、私はリビングの扉を開けると、私たちを待っていたその人と目が合った。
「あら、やっと来たのね」
「話って何?」
「何度も呼んだのよ?聞こえなかったのかしら」
ソファに座っていたその人が立ち上がり、私たちに近づいてくる。
「ごめんなさい。音楽聴いていたの」
視線を外して答えると、その人は「あらそう」と興味のなさそうな言葉を返して、私の後ろに立つ男の隣に立った。
「用がないなら、部屋に戻りたいんだけど」
腹が立つ。それを今更隠すこともしない。
そうなったのはいつからだろう。初めからかもしれない。
「まったく、お兄ちゃんが帰って来た時くらい、家族で過ごしてもいいでしょう。成人式の日だって勝手に帰って」
そう話すこの人は、私の継母だ。

