放課後。図書室。
静かな中、人気のない奥にふたりして床に座る。
「ごめん」
急に謝った和くんは触れてるのか分からない力で私の手に手を被せた。
「俺さ、あの時。、、いたんだ」
「、、あの、時?」
「陽ちゃんが男3人組に襲われた時」
あの時を思い出して怖いのは私の方なのに。
和くんの声はなぜか震えていた。
「ねぇ、どうして。和くんが泣くの」
「え、、あー。くそ。俺泣いてんのか。」
情けねぇ。って
強がるけど弱くなっていた。
「月島より、もっと早く助けられたのに。ごめん」
「克服しないといけないのは。私より和くんの方」
「、、、ん。俺さ、強がってるだけで。情けねぇんだわ」
「私は、弱いふりしてるだけかも。」
「弱いふり?」
「ん。いつも泣いて、好きな人達にかまって欲しいだけなんだ。」
「、、、俺らって、意外と似てるな」
「そう?」
「お互いに、リハビリしない?」
和くんの傷も知らないのに。無責任に協力していいものなのか。
でも、和くんが私に求めるということは、少しでも私でリハビリができると感じたからだろうか。
「なに、すればいいの」
素直に聞いてみたけれど。
ちょっと後悔した。
「俺が克服しなきゃなんないのは過去なんだよね。親のおかげで人に執着しちゃうんだ。」
「執着?」
「美咲は初めて好きになった子で。親父の女癖が悪いせいで泣かされた母親見てたから。
美咲に必要以上の一途な思い」
顔を下げて、頭を悩むように抱えた和くんは、
辛そうに悔しそうに
「そんな綺麗事じゃねぇんだよ。束縛するけど全部俺の中で解決しようとして、考えすぎて疲れて嫌いになるんだ。」
人を好きになる事が怖く、自分が壊れるのが怖いという。
「親父、暴力的な人で。母親はいつもアザつけてた。だから、美咲を突き放すことも出来なかった」
「、、、昨日」
「昨日は。初めてあーやって冷たくした。いつも月島が迎えに来るから」
「むかえ」
「陽ちゃんがいたから。俺、強くなれた気がした」
軽い人だと思っていた。
何も考えてない最低な人だと。
「好きじゃない。まだ。でも、陽ちゃんはどうかわからない」
「わからないって」
「好きになるのは難しい。けど、嫌いになるのは簡単なんだ。でも、陽ちゃんのことを簡単に嫌いになるか分からない」
そう、距離を短くしていく和くん。
颯汰くんとは違うの。
全く。
しょっぱい味がした。
普通なら嫌なのに。今触れた唇は、とても悲しくて、重くて、涙が出ないほど胸を縛り付けた。