冬休みまであと少し。

その事だけを考えて学校に登校する。




「陽、おはよ」

「んー、」



下駄箱に靴を入れながらそこにいた男の子の挨拶に何となく返す。




「陽。昨日は大丈夫だった?、、その」

「、、ぇ」

「急に、帰っちゃったから」

「颯汰くん」





あんなに避けられてたのに。なんで。
どんな風の吹き回しよ。




「あ、今日、来る?」

「へ?」

「カフェ。ティラミスすぐ出せるようにしといたし」

「、、、ティラミス」

「ん。あ、一緒に行く?」

「一緒に?」

「ん!この前、一緒に帰れなかったし」





なんで、どうしたの?




「ねぇ、颯汰くん。どうかした?」

「なに、が?」

「だって、急に」

「あー、俺。ちょっと欲に従おうと思って」

「よく?」

「そう。陽と一緒にいたいって欲」



へへっと照れくさそうに笑う颯汰くんに、どこか懐かしく心がじわっと温かくなった。

でも、素直に喜べはしなかった。




「そっ。勝手にして」




美咲って子との関係が気になる自分がいるから。
図々しくも彼女と颯汰くんの間にイラつきを覚えてしまっていたから。


嫉妬となる前に消したいと願う。




だから、冷たくしてしまう。





「陽、迷惑に思っても、少しは我慢して」

「我慢してって」

「いや、慣れて?的な?」

「別に、気にもとめてないですが?」

「少しは俺の事考えてよ」

「考えてますよ」

「ほんと?」

「、、、あ、和くんに用があったんだぁー」




上手く逃げないと。
せっかく離れたのに、急に来られても。

混乱して、余計に胸が忙しくなるだけだ。




「まって」



グッと男の人の力で引き寄せられた体は一瞬で熱くなった。




「和は、ダメ」

「ぇ」



選択ミス、、。



「てか!、、、あんまし男と仲良くして欲しくない」

「ぁの、」

「和より、俺の方が先。」





小さい子がお母さんに嫉妬をぶつけるように、不貞腐れた顔で上から私を見下ろしてるはずなのに、

上目遣いのように可愛らしくて、近い距離に苦しく弾む心臓が爆発しそうになっていた。





「わっ!、、わかった、、から。離して」



うん!と子どものように喜びを見せる颯汰くんは、私には毒のようにも感じられた。