【水島 陽】



暗くなってきた空。

何も考えずに歩く道は気楽だった。




「っあ、、か、和くん!」

「ん?」

「む、向こう、いこ。」

「へ?」



祖母の店の看板が光っていた。

もう、8時なの?!


いや、カフェ着いたのたしか、6時じゃ。




「どうしたの?陽ちゃん」

「いや、そのぉ、」



「陽ちゃぁーーん!!」




げっ、、。

甲高い猫声が背中に突き刺さる。



「誰、あのおばさん」

「、、、お母さん」

「ぅえ?!マジか」



急に身なりを整えた和くんは母に挨拶をした。

祖母のスナックの前で



「はじめまして。木崎 和(きさき かず)と言います。陽さんとは、同じクラスで」


「やっだぁ、もう!堅苦しいのはやめて、ね?ささっ、入って」




「お母さん!」


和くんをスナックに引っ張る母親に呆れる。

こんな所、制服の私達が入っていいわけ、、


ないでしょーが!





カランカランと聞きなれた音が申し訳なさを強くする。



「誰だい、まだ店は、、、はっ!また新しい男連れてきたんか!!再婚したんじゃろーが!」

「違うわよぉ。この子は陽ちゃんの彼氏よっ」



勝手に嘘をつくな!



「違うよ。和くんはたーだーのっクラスメイトです」

「そうかい。」



わかってますよ。と祖母が和くんと私に席に座るように促す。

奥の落ち着いた部屋は特別な人しか入らない所。




年忌の入ったソファーに少し間を空けて並んで座る。
カランっと氷が音を出して目の前に置かれたオレンジジュース。
苦笑いの和くんは、無理やり喉に運ぶ。



「ごめんね。もっと早くに逃げていれば」

「なんで逃げんの?」

「だって」

「面白いじゃん。」

「え?」

「俺、こういうの平気だし。むしろ陽ちゃんのお母さんとかおばあさんとか好きだよ」

「、、、あり、がと?」

「ん。」



少しだけ体制を崩した和くんは、本当に何とも思ってないようだった。




「私ね、親が小さい時に離婚して、母親について行ったの」




店の方で支度をする祖母と母親を見て、これとなく話してしまった。

話題がなかったせいかもしれない。




「でも、母親が連れてきた新しい男の人がね、浮気する人で。お母さん、いつも泣いてた。なのに、ある時出てっちゃったんだよね」

「え」

「私置いて。その男の人と」

「、、そう、なんだ」

「で、ここに引き取られたの。」

「へぇ」

「やっと、慣れてきたのにさ。急に母親が帰ってきて。しかも、元旦那と再婚して、北海道に転勤だから一緒にこいって」

「は、、、なんか、やべぇな。」

「だよね。、、颯汰くんは、こんな状態になった私なんか知らないんだよね。昔のまんまだと思ってる。」

「ねぇ、」




喋り過ぎたかな。つまんないよな、こんな話。



「ごめん、つまんない、よね。」

「ん。結局、月島の事になったからね。つまんない」

「ごめん」

「じゃあさ、俺と付き合ってよ」

「どこに?」

「そのまんま」