【月島 颯汰】




「陽っ」


店を走って出ていった陽を追いかけようとしたけど、足が動かなかった。

『話しかけてこないで』

その言葉が俺にはすごく重りになっていた。




「ねぇ、ちょっといいかしら?」



陽の友達、愛美ちゃんが仕方ないという顔で座れと陽のいた席を指さした。

躊躇いながら座れば溜息をつく愛美ちゃん。



「ツッキー、まだ陽のこと好き?」

「は?」

「そっか。でも、陽といつまでも真面目に距離とってたら取られちゃうよ?」

「取られるって、、、」

「もう、和くんにファーストキス奪われちゃったらしいし?」

「はぁ!?」



バンッとテーブルに手をおき、立ち上がれば周りにいたお客さんが一斉に俺をみた。

軽く頭を下げながらさがらない腰をおろす。



「どうゆうことだよ」

「知らない?結構噂になってたけど」

「、、嘘のキスだろ?」

「はぃ?」

「俺、みたし。図書室の前で、見せかけのキスされてんの。」

「と、図書室。、、ん。それは、知らないな。多分、違う」



違う?まだ、、、何か。

マジかよ。



「教室で大胆にチュッと」

「きょ、教室?!」

「いやぁ、でも。まぁー。それから和くん1度も陽に話しかけてこないし。」

「そ、そうなのか?」

「ん。まぁ、でも、陽にとっては意識しちゃう存在ではあるよね。」



和、、、なんで、和なんだよ。



「ソウちゃん、友達に用あるからちょっと抜けるー」

「っあ、了解」



美咲が友達と会うと空いてきた時間帯になった今、店を抜けた。


新しいとはいえ、小さなカフェでメニューもティラミス以外はシンプル。だから、それといって来る人は多くない。



「で、陽の事どうすんの?」

「、、別に。今は、無理っつーか」

「さっきの、、美咲って子?」

「は?なんでそーなんだよ」

「陽は絶対、ツッキーと美咲っちが何かあるって勘違いしてるよ?」



美咲っちって、、、



「何もねぇよ」

「ふーん。本当に何もない?」

「ああ。」

「本当のほんと?」

「っだから、そー言ってんだろ」

「ツッキーが何もなくても、美咲っちは何かあるかもよ?」

「どーゆー意味だよ」

「好きとか?」

「ねーよ」

「だってぇ、ありゃ絶対彼女ヅラした嫉妬っすよ、兄さんっ」




普通にしてりゃ、一般的可愛いのに。
愛美ちゃんは、少し変わった子なのか。



「ツッキー。ノロノロしてたら、陽いなくなっちゃうよ?」

「、、、わーってるよ」

「陽のためにもさ。あの子、男信じられないからさ、ツッキーの真っ直ぐさが余計に怖いんだと思う。だから、和くんみたいな人の方がって」

「なんだよ、それ。和は和で、俺は俺じゃんか」

「いや、、ん。もう、口出ししません」




和は、、、ダメなんだよ。
あいつはやめてくれ。

陽、俺には少しも可能性ないのか?






「陽、寂しがり屋さんだから。ツッキーが帰ってきてくれたら、飛び跳ねて嬉しがるかもね」


「、、、帰ってやるよ。嫌われても。」




和になんか、少しの隙もあたえねぇくらいに。