和くんも避けて、祖母の家でも母親が来る度に苦しくなって、颯汰くんとすれ違ったら以前より大袈裟に避けられるようになった。







メガネを外して、髪をセットし、制服を着崩して優等生をやめた和くん。

1週間も経てば、キスの噂は薄まり、彼は皆から容姿で注目されるようになった。






「ねぇ、私。あの人嫌い」

「ん。知ってる」


和くんが嫌いと愛美にポロッと言うと、当たり前だと返された。




「ねー、陽?」

「ん?」

「しないつもりだったんだけどさ。」

「ん」

「マジで、同情せずにはいられないんだけど。」

「自分でも、思います」





男は信用ならん。
本当にその通りだ。

和くんは、高1の時委員会が同じだった。
会うのは月に1、2回。なのに、夏休み前、”好き”と言われた。

冗談だと、聞こえないふりをした。



なのに、今更。
しかも、キスまで奪っといて、、用無しになったのか。

何もなし。





「あれ、ファーストキス、、とか?」

「正解」

「うわぁ、まじか」

「私のファーストキスは、クラスの皆の前で、今や人気者の和くんとだよ。
有難いよ」

「ん。すごく嫌味だね」

「なにがよ?恨みだよ」



なんで、こう。




「そう言えばさ、」

「どうしたっ陽!」

「急にテンションあげなくていいから」

「そっか。ごめん。で、なに?」

「お母さん、お父さんと再婚した」

「は?いつ?」

「結構、前。かな?」

「なんで言わないの」

「 、、、転校。させられそうで」





時々、祖母の店にくる母親が言っていた。
「お父さんの転勤先ね、北海道なんだって。これを機にさ、家族3人でやり直さない?」

正直、人生をやり直せるなら何もかも忘れて
新しい地でスタートするのも悪くない。



なんて、今は、思う。



「どこに?」

「北海道」

「は?、、嫌だよ」

「愛美も来る?」

「無理に決まってんでしょ」

「楽しいよ?、、多分」



颯汰くんのせいで大きく広がった穴が、和くんのおかげで余計に埋まらずじまい。

そんな毎日より、楽しいはず。





「ツッキーには、言わないの?」

「っ、、なんで。言う必要ないよ。」

「彼女いるかもだけどさ。陽は、好きなんでしょ?」

「好きじゃ、、なぃ」

「ふーん、いつまでも強がってられると思うなよ」



分かってる。でも、認めたくない。

好きとか、、そんな感情、大っ嫌い。


そもそも、颯汰くんを考えて胸が痛くなるし、そんな苦しい思い、嫌だ。




「放課後、遊びに行かない?」

「、、どこに」

「カフェ。新しく出来たとこ」



さっきの流れを変えるように笑って誘う愛美は可愛い。

それに、つられて笑ってみせる私は、気持ち悪い。