「壱嘉(イチカ)聞いたよ〜?」
放課後日直日誌を書く私の隣で、鼻の下を伸ばしている麗。

「聞いたって何を?」
麗(ミヤビ)には目を向けることなく、手と口を動かす。

「なにをって、今日半年記念日なんでしょ?」
あー、話しってそれね。

「そのことなんだけど、別れたよ」
「え… は?」

口をぽかーんと開けて目をパチクリする麗。
「別れたってなんで? あんた達おしどり夫婦って言われるくらい仲よかったじゃん!」

おしどり夫婦ね…。

「麗。 おしどり夫婦は、浮気なんてしないよ」
そう、浮気なんてしないはず。

「うっそ…。 浮気ってあの高橋が!?」

麗が驚くのも無理はない。
元カレ高橋 真尋(マヒロ)は、浮気とは無縁の爽やか好青年だったから。

「綺麗さっぱり振られたよ」
私は真尋にとって12番目の彼女だったらしい。

「あの高橋が。 それもあんた12番目って…。
好青年気取って何人も女がいたわけね」

ほんと笑っちゃう。
半年も騙されてて女の影にすら気づかないとか。

振られたときは何も考えられなかったけど、12番目だって知った時一瞬で冷めてしまった。