「今飛び出してったの今日面接に来てくれた子でしょ。今度はいったい何したんですか?」

「人聞きの悪い。俺は何もしてへんで。むしろ逆や。あの女にボロッカス言われたとこだったんやから」

「何もしてないのにそんなボロッカス言われるわけないじゃないですか。また何か怒らせるようなこと言ったんでしょう?」

言いながら私は畳んだ日傘とお花の包みをもって奥へと向かった。
そのあとを、

「違うってー。俺なんも間違ったこと言うてへんもん」

小さな子供のように口を尖らせた奏輔さんがついてきて訴えた。

「何も間違ったこと言うてへんのに、この一ヶ月で面接に来てくれた三人のうち、三人ともが最後、カンカンに怒ってお店を飛び出していくのはなんでなんでしょうね。不思議ですね」

言いながら、キッチンとは別に奥にある水道のところに行ってバケツに水を張り、薄やお花の茎を漬けていく。

思いきり厭味で言ったのに、奏輔さんは妙に納得したような顔で

「ほんま、ならまちの七不思議やで。今時の若い子の考えることは分らんな? 悠花ちゃん」

と同意を求めてくる。
ナチュラルに「若い子枠」から外された私は仏頂面で奏輔さんをふり返った。