「何で?」
「だ、だから……」

「就活中なのは分かったから、もちろん時間帯とかは融通きかせて貰う。バイト代も無理言っとるの分かっとるから出来る限り希望に添わせて貰うし」

奏輔さんは熱心に言い募った。
その勢いに気圧されながらも、私は何とか湧き上がって来た疑問を口にした。

「な、何で……?」
「うん?」

「あの、じゃあこっちからも聞かせて貰いますけど、何でそうまでしてさっき会ったばっかりの私になんか頼むんですか? 次のバイトの子が見つかるまでの間だったら、お知り合いの方とか、それこそこのあたりのご近所の方とか、お手伝いに来てくれる方見つかるんじゃないですか?」

実際、パートの沢野さんはこの、ならまち界隈に住んでいる人みたいだったし。

急に来られなくなった責任を感じてもいるみたいだったから頼めば知り合いの一人や二人紹介してくれると思うんだけど。

「そんなん、俺が悠花さんのことええな~って思ったからに決まっとるやん」

「え、ええっ!?」

え、ええなって……ええな~って思ったって、それって、どういう……。

「テキパキしとって手際いいし、そのくせお客さんへの対応とかほんわりしとって感じええし、店バタバタしてきてもこうキリキリした感じせえへんし」

テキパキ……手際……。

「なんちゅうか、今日一日……ちゅうか半日? 一緒に店やっとって気持ちええっていうか、こう、いつもより楽しく働けた気がするんだよな。いつもは中とフロアと両方に気遣って、落ち着かん気分で作業しとったんやけど今日はそれがなくて調理に専念できたっていうか……」

あ。「ええな」って私の仕事ぶりのことね。
なんだ。って、そりゃそうか。

勘違いに頬が熱くなる。

そしてそれ以上に、じわじわと胸の奥からこみあげてきた温かさは嬉しさからだった。


おっかなびっくり、手探りでやっていた感のある今日の仕事だったけれど、それでもやりながら私自身も楽しさを感じていた。

ああ、そうだ。
私はもともと、お客さんと接して、その希望を叶えたときに喜んでいただけるお顔を見られることが好きで、百貨店という仕事を選んだんだった、なんて新卒で就職したばかりの頃の気持ちを思い出したりもして。

そんなことを思いながら働いていた仕事ぶりについて褒めて貰った。
そのうえ、明日からも一緒に働いて欲しいとまで言って貰えた。

ある意味、恋の告白よりも嬉しいかもしれない。