古都奈良の和カフェあじさい堂花暦

若い女の子がここでアルバイトをしようとする志望動機としては十分なんじゃないでしょうかね。

となれば、身支度に時間がかかるのも無理がないというか自明の理というか。

好意を持っている異性の前で少しでも綺麗でありたいっていうのは、古今東西、普遍の女ごころだものね。

「言ったことしかやらんのはまあイマドキの若い子やからしゃあないとしても、やること遅いし、間違っとるし、手動かすより口動かしとる時間の方が長いし」

イマドキの若い子って……あなたもまだ二十代でしょうに。

「それでちょっと注意したらすぐ泣くし、かなわんわ」

うーん……。
それはどうかな。

この人の「ちょっと」は世間一般の基準とはだいぶズレてるような気がするし。
かなりキツイこと言ったんじゃないのー、とか思ってしまうなあ。

そう言えば、さっきのお茶席でもおばさまたちが「バイトの子が続かない」って話してた気がする。

若い子が居ついてくれないから、祖母みたいなご近所のつてを辿って沢野さんみたいな年頃の人にパートに来てもらってたってことなのね。

「古代のエジプトかどこかの記録にも『イマドキの若いもんはー』って嘆いてる言葉が残ってたとかって話聞いたことがありますけどね」

言いながらパラパラとメニュー表をめくっていく。

一ページ目は、あんみつやわらび餅、葛餅などのセットメニュー。

二ページ目は和風のパフェ。

三ページ目は、かき氷。

次のページは団子とぜんざい。

その次が季節の和菓子のセットメニュー。

ところてんやアイスクリームなどの単品メニューもある。

ドリンクのページも、基本の緑茶の他にも抹茶ラテやほうじ茶ラテ、柚子ジンジャーソーダやきなこカフェオレなど、美味しそうな名前が並んでいる。