「せや。悠花」
「へっ?」
なるべく目立たないようにひっそりと立っていた私は急に祖母に呼ばれて、間の抜けた声をあげてしまった。
「あんた、ここ手伝ったげ」
「え、えっ?」
戸惑っている私の前で、祖母はにこにこと話し出した。
「な、それがええやん。あんた今、こっちで仕事探しとんのやろ? ちょうどええやん」
「し、仕事ってお祖母ちゃん……」
そんなバイトみたいのじゃなくてもっとちゃんとした……とは店主さんを前では言いづらい。
口ごもっているうちに彼が訊ねた。
「あの、そちらは?」
「ああ、ごめんな。奏ちゃん、この子、うちの孫の悠花。昨日東京からこっちへ帰ってきたばかりやねん」
「昨日?」
そこで彼は初めてまともにこっちを見た。
あ、会ったっていってもほんの一瞬だったし、昨日とは髪型もメイクも違うし、着物姿だし、そもそももう覚えてないかも。
という一抹の期待は、しばしの沈黙とともに居心地が悪くなるほどじいーっと観察されたあとで、もろくも打ち砕かれた。
「あ、高下駄の階段落ち女……」
という呟きで。
「お、落ちてませんけどっ」
とぼけるのも忘れて思わず反論してしまう。
「ああ。あんたはな。落ちたのはあのガラガラやったな」
い、いきなりあんた呼ばわり!?
しかもガラガラって……。
「あのあと、あのぶっ壊れたガラガラ抱えて高下駄はいてちゃんと家まで帰れたんか? えらいふらっふらしとったからまたその辺で引っ繰り返っとらんか心配しとったんやけど」
高下駄じゃないし、ウェッジソールだし……!
何? なんか昨日に増してなんかズケズケ言われてるんですけどっ。
知り合いの孫だったからってもう私まで知り合い枠なわけ?
職場や合コンとかでもそういう距離感おかしいタイプいたけど私はそういう人って苦手だ。
「へっ?」
なるべく目立たないようにひっそりと立っていた私は急に祖母に呼ばれて、間の抜けた声をあげてしまった。
「あんた、ここ手伝ったげ」
「え、えっ?」
戸惑っている私の前で、祖母はにこにこと話し出した。
「な、それがええやん。あんた今、こっちで仕事探しとんのやろ? ちょうどええやん」
「し、仕事ってお祖母ちゃん……」
そんなバイトみたいのじゃなくてもっとちゃんとした……とは店主さんを前では言いづらい。
口ごもっているうちに彼が訊ねた。
「あの、そちらは?」
「ああ、ごめんな。奏ちゃん、この子、うちの孫の悠花。昨日東京からこっちへ帰ってきたばかりやねん」
「昨日?」
そこで彼は初めてまともにこっちを見た。
あ、会ったっていってもほんの一瞬だったし、昨日とは髪型もメイクも違うし、着物姿だし、そもそももう覚えてないかも。
という一抹の期待は、しばしの沈黙とともに居心地が悪くなるほどじいーっと観察されたあとで、もろくも打ち砕かれた。
「あ、高下駄の階段落ち女……」
という呟きで。
「お、落ちてませんけどっ」
とぼけるのも忘れて思わず反論してしまう。
「ああ。あんたはな。落ちたのはあのガラガラやったな」
い、いきなりあんた呼ばわり!?
しかもガラガラって……。
「あのあと、あのぶっ壊れたガラガラ抱えて高下駄はいてちゃんと家まで帰れたんか? えらいふらっふらしとったからまたその辺で引っ繰り返っとらんか心配しとったんやけど」
高下駄じゃないし、ウェッジソールだし……!
何? なんか昨日に増してなんかズケズケ言われてるんですけどっ。
知り合いの孫だったからってもう私まで知り合い枠なわけ?
職場や合コンとかでもそういう距離感おかしいタイプいたけど私はそういう人って苦手だ。
