「どしたん?」
「娘からやわ。なんか急に入院せなならんことになったって言うてきた」
「えっ、真緒ちゃんが?」
「確か今二人目がお腹におるんやろ」
祖母やお稽古仲間の女性たちが口々に訊ねる。
「そう。予定日はまだ先なんやけど、なんか今日の検診で切迫早産の可能性があって絶対安静にせなあかんて言われたって」
「いやー」
「大変やないの」
「真緒ちゃんのお家って桜井やった?」
「うん。先生、すいませんけど私今からすぐ行ってきますわ。上の孫が保育園に行っとるからお迎えに行かな」
「もちろんや。気いつけてな」
「真緒ちゃん、お大事に」
あたふたと立っていきかけた女性は、
「あ、あかん」
と言って棒立ちになった。
「何があかんのん?」
「うち、今日、『あじさい茶屋』の手伝いの日やった。午後から行けるって約束しとったんや」
「沢野さん、あんた、こんな時に何言うとるん。そんなこと言うてる場合やないやろ。すぐに真緒ちゃんとこ行ったり」
祖母が叱りつけるような口調で言った。
「でも、この間バイトの子やめてしまって今日うちが行かへんと奏ちゃん困ると思うんや」
「また辞めたんか。いったい何人目や」
「今度の子はひと月ももたんかったな」
おばさんたちが口々に言う。
「あんたがおらんと困るのは真緒ちゃんとお孫さんの方がもっとやろ。いいからはよ行き。あっちにはうちから言うといたるから」
沢野さんと呼ばれた女性はそれでも躊躇うそぶりをみせていたが、祖母や他の女性たちに追い立てられるようにして、
「ほな、すんませんけどよろしくお願いします。奏ちゃんにもくれぐれも謝っといてください」
と言いおいてせかせかと帰って行った。
どうやら沢野さんはどこかのお店でパートの仕事をしていて、そこに急に行けなくなってしまったことを気にしていたみたいだった。
「娘からやわ。なんか急に入院せなならんことになったって言うてきた」
「えっ、真緒ちゃんが?」
「確か今二人目がお腹におるんやろ」
祖母やお稽古仲間の女性たちが口々に訊ねる。
「そう。予定日はまだ先なんやけど、なんか今日の検診で切迫早産の可能性があって絶対安静にせなあかんて言われたって」
「いやー」
「大変やないの」
「真緒ちゃんのお家って桜井やった?」
「うん。先生、すいませんけど私今からすぐ行ってきますわ。上の孫が保育園に行っとるからお迎えに行かな」
「もちろんや。気いつけてな」
「真緒ちゃん、お大事に」
あたふたと立っていきかけた女性は、
「あ、あかん」
と言って棒立ちになった。
「何があかんのん?」
「うち、今日、『あじさい茶屋』の手伝いの日やった。午後から行けるって約束しとったんや」
「沢野さん、あんた、こんな時に何言うとるん。そんなこと言うてる場合やないやろ。すぐに真緒ちゃんとこ行ったり」
祖母が叱りつけるような口調で言った。
「でも、この間バイトの子やめてしまって今日うちが行かへんと奏ちゃん困ると思うんや」
「また辞めたんか。いったい何人目や」
「今度の子はひと月ももたんかったな」
おばさんたちが口々に言う。
「あんたがおらんと困るのは真緒ちゃんとお孫さんの方がもっとやろ。いいからはよ行き。あっちにはうちから言うといたるから」
沢野さんと呼ばれた女性はそれでも躊躇うそぶりをみせていたが、祖母や他の女性たちに追い立てられるようにして、
「ほな、すんませんけどよろしくお願いします。奏ちゃんにもくれぐれも謝っといてください」
と言いおいてせかせかと帰って行った。
どうやら沢野さんはどこかのお店でパートの仕事をしていて、そこに急に行けなくなってしまったことを気にしていたみたいだった。
