今だってそうだ。
親孝行だという沙代里ちゃんの言葉のうらに、呆れているような憐れんでいるような響きを感じてそれに嫌な感じを受けているのに反論することも出来ない。
曖昧に笑っているだけだ。
沙代里ちゃんはそんな私を見て、
「まあ、お義母さんも言い出したら聞かへんところあるもんね」
と首をすくめるようにして笑った。
途中、興福寺の南の石段のところを通った。
昨日、作務衣姿の男の人に助けられ、ついでにお説教みたいなことを言われた場所である。
(また偶然会ったりしないよね……)
そんな偶然そうそうあるものじゃないとは思いながらも、ついビクビクとあたりを伺ってしまう。
祖母の家は元興寺というお寺の近くの「ならまち」と呼ばれる一角にある。
小学校の頃までは、両親や弟と一緒によく遊びに来ていたっけ。
中学に入って、「部活や勉強が忙しい」というのを口実にしてお茶のお稽古に行くのをやめてしまって以来、なんとなく行きづらくなってしまって足が遠のいてしまっていたので、家に行くのは本当に久しぶりである。
祖父の法事のときは、京都の駅前のホテルで行われる集まりに出席してそのまま新幹線に乗って東京に帰ってしまっていたから。
親孝行だという沙代里ちゃんの言葉のうらに、呆れているような憐れんでいるような響きを感じてそれに嫌な感じを受けているのに反論することも出来ない。
曖昧に笑っているだけだ。
沙代里ちゃんはそんな私を見て、
「まあ、お義母さんも言い出したら聞かへんところあるもんね」
と首をすくめるようにして笑った。
途中、興福寺の南の石段のところを通った。
昨日、作務衣姿の男の人に助けられ、ついでにお説教みたいなことを言われた場所である。
(また偶然会ったりしないよね……)
そんな偶然そうそうあるものじゃないとは思いながらも、ついビクビクとあたりを伺ってしまう。
祖母の家は元興寺というお寺の近くの「ならまち」と呼ばれる一角にある。
小学校の頃までは、両親や弟と一緒によく遊びに来ていたっけ。
中学に入って、「部活や勉強が忙しい」というのを口実にしてお茶のお稽古に行くのをやめてしまって以来、なんとなく行きづらくなってしまって足が遠のいてしまっていたので、家に行くのは本当に久しぶりである。
祖父の法事のときは、京都の駅前のホテルで行われる集まりに出席してそのまま新幹線に乗って東京に帰ってしまっていたから。
