「放して下さい!」


彼の腕から逃れようともがくが、全くびくともしない。


「そのお願いは聞けません。この手を放したらあなたは逃げてしまうでしょう?決して放したりしませんよ。やっと見つけた運命の人ですから。
一目見た時、確信しました。貴女に恋をしたんです。」


「何を…言ってるですか…私は和也さんの妻ですよ?」


「そんなこと関係ありません。貴女が"今"誰の妻だろうと、運命の人に違いはないんですから。」


「わ、私は、和也さんを愛しています…貴方が入る隙なんてないくらい…」


「貴女が愛していたとしても、主任は貴女のことを愛しているんでしょうか?」


「!」


「僕には分かるんですよ。貴女が愛に充たされていないということが。」


「そんなこと…」


「昔からの特技なんです。夫婦または付き合っている二人を見た時にどんなに隠していてもそれが分かるんです。まあ女性限定の特技なんですが。外れたことはありません。」


「いえ!私は!ー」


「貴女はそう思いたいんじゃないですか?まだ愛されていると。
結婚してまだ二年。二年しか経っていないのに、何のために私と結婚したのか疑問に思うときがある。でも、あの人は私を愛してくれているはず。
その、指にはめた結婚指輪を見る度に、そう自分に言い聞かせていませんか?」


「………」