「木下さんはどういった物が好きなんですか?」


少し放れたリビングにいる木下さんに少し大きめの声で聞けば…


「僕は実里さんみたいな人が好きです。」


直ぐ後ろから声がして背筋に悪寒が走った。


「や、やだ~木下さんそんな冗談笑えないですから~」



適当に目についた厚揚げの袋を掴み冷蔵庫を閉め、また彼から距離をおこうとした。


けれど…

後ろから抱き締められ動けなくなった。






怖い…






「木下さん?かなり酔ってますね?良かったらソファーで少し横になって下さい。」


「酔ってませんよ。これくらいじゃあ酔いませんから。僕は本気で言ってます。」


私を抱き締める腕に力が入り、恐怖から手に持っていた厚揚げの袋を落としてしまった。


「木下さん、放して下さい…」


返事がなく、「木下さん?」と呼べば耳元に生暖かい息が掠めた。


「僕のことは流路(リュウジ)と呼んで下さい、実里さん。」


呟かれた声に手が震える。


大きく息を吸い込む気配がした。


「シトラスの香りですね。僕好きなんですよ、この香り。」


背筋をゾクゾクと嫌な震えが走った。




この人…ヤバい…

和也さん!早く帰って来て!