私は微笑み、口パクで『ありがとうございました』と伝え、席に着いた。


そこで、ふと先程の給料明細の事を思い出す。


さっきランチの話になって、確認してなかったけど…
今月はどのくらいもらえるのかな?


二つ折りの紙を開いて見ると…




何この金額!?




そこにはいつもの金額の倍どころではない金額が書かれていた。



これ…私の明細だよね?




穴が空くほど見るが…

どう見たって私の明細書だ。

私は直ぐに係長を探した。



この時間ならきっとあそこだろうと、同じフロアーのある部屋を覗く。



私の推測通り、係長は喫煙ルームで煙草を燻らせていた。



「ああ、それ例の連続殺人事件のおとり捜査の報奨金だよ。
実里ちゃんみたいな一般市民の捜査協力者は月々の給料は安いけど、事件の解決度合いによっては今回みたいに報奨金が出るんだよ。」



そう言えば、以前そんなこと言われたような…



何にしろ、目標金額に近づいたんだから喜ばしいことだ。

今にもスキップしそうな勢いで自分の席に戻ると、開け放していた窓から突如強風が吹き込んできた。

手に持っていた明細書がその風に拐われ、床を滑っていく。


「ああ…明細書ー」


急いで追い、手を伸ばすが風が強過ぎて一向に掴めない。


だが、それもやがて誰かの足に引っ掛かり止まった。