「目的は無事達成出来ましたが、和也さん…いえ、係長が犠牲に…」


そう言えば…実里にまだ言ってなかったな。


「ああ~俺無事だよ?」


タイミングよく現れた係長は、申し訳なさそうに笑っている。


「えっ!?係長!死んだはずですよね!朝比奈さんが確認したって!」


そりゃ驚くよな。死んだ奴が現れたら。


「ごめんねー、係長が生きてること木下にバレないように、実里にはだまっておこうって話になったんだー
まあ、昔から言うでしょ。騙すなら味方からってね。
そのおかげで演技に現実味が帯びたでしょ? 」


「それにしたって酷すぎますー!私、係長が本当に死んじゃったんだと思ってスッゴく泣いたんですからね!もう!泣き損ですよ!」


仕事を円滑に運ぶためとはいえ、実里を泣かす嘘に加担したことに罪悪感が拭えなかった…
だがその反面、実里に泣かれる係長が羨ましくもあった。

心の狭い男なのは分かっている…
それでも、実里が俺以外の男のために涙を流すことに、嫉妬心が膨れ上がる。

しかもこの男、実里にキスしやがった…

あの時の黒い俺が顔を覗かせる。


「あのまま、死んでれば良かったのに。」


気付けば思ったことが口から出ていた。


「えっ!?東酷くない!?俺、かなり冷たい海に落ちたんだけど!」