「いらっしゃいま………………せ。………
!!森先生!!!」

いつにない彼女のはしゃぎぶりに驚く。

夕暮れがめっきり早くなり、5時を過ぎると真っ暗になる12月。

この時間になると客足は途絶え始める。

バイトの彩ちゃんも少なくなったパンをまとめて

お買い得品を作りながら、トレイを片づけていた。

「ヨッ。こんにちは。」

この辺りでは有名な………森悠人。

オレより3、4歳若いらしい。

顔良し、スタイル良し、おまけに子供好きとくると………

この辺りのオバチャン達の噂の的である。

浮いた話しも聞かないため、誠実だと言い始め………

大して話したこともないのに、性格も良いと言われている。

「今日はどうしたんですか?」

「どうしたって……パン屋に来て花を下さいなんて言わないでしょう?
蒼汰が『あそこのパン、メチャ美味しいよ。それに、彩ちゃんが働いてるんだよ。』
って…自分の家みたいに自慢してて………
いつもの帰りだと売り切れだけど、今日は研修の帰りだからね。
まだあるみたいだな。」

「あっ、蒼汰君が…………。本当に好きみたいですね。
帰りにいつも寄ってくれます。」

「それはパン目当て?彩先生じゃないの??」

「違いますよぅ。
私も実習中に薦められて、ここのパンのファンになって
バイトまでしちゃってます。」

「へぇ!そんなにみんながお薦めするなら、食べないとね。
園にもお土産にするから、お薦め10個入れてくれる?」

「はい!ありがとうございます。」

レジを済ませ、送って出るまで…………

何故だかオレは…………裏から出ることが出来なかった。