白地に赤と黄色の椿柄。
葉は淡いパステルグリーンで描かれていて、帯は落ち着いた赤色。

それにホワイトシルバーの帯締めを巻き、ヘアスタイルはサイドだけを編み込み、耳の側に小さな花のアクセを付けた。


「うん、上出来!」


手を止めて鏡の中を覗き込むもう一人の親友、高崎 円香(たかさき まどか)。
彼女は美容師をしていて、着付けの予約はこの浴衣を買った時に入れていた。


「理香子から聞いてはいたけど、本当にやっとだね」


理香子伝いに坂巻さんのことを聞いている円香は、体に巻いていたケープを外しながら「お疲れ様」と労った。


「ようやく杏が重い腰を上げる気になってくれて、私は嬉しいよ」


椅子のロックを外して回転され、私は膝を伸ばして立ち上がった。
全身が映る大きな鏡の前で最終チェックを済ませた後、円香はポン!と背中を押してウインクした。


「頑張っておいで、デート」


下手に応援されると余計に緊張が走る。
頼むからやめて、とさっきから何度言ったことか。


「もう、二人とも私を揶揄い過ぎる」