それは毎年行われる花火大会のもので、私はそれに行くつもりで、用意だけは万全にしてるものが家にある……。


「俺、この最近夏祭りってものに行ったことないんだよな。人は多いし帰り道は渋滞するし、行ってもあんまり面白くないイメージが強くって」


だったらどうして私を誘うのか。
人が多くて渋滞するのが嫌で、面白くないと思うのなら行かなければいいんじゃないのか。


「あの…」

「でもさ」


疑問をぶつける前に彼がその理由を話し始めた。


「諸住さんと一緒に出掛けてみたいんだよな。一人じゃ面白くない祭りでも二人でなら楽しいかな…と思うから」

「でも、私…」


そんなに気の利いたことを言える訳でもないし、そもそも今日限りで、坂巻さんと二人だけで会うのは終わりだろうと思っていたのに。



「駄目?」


小首を傾げる彼が訊いてくる。
真面目な表情で見ているものだから、速攻お断りというのは難しくて。


「あの…」

「いいよな」

「えっ?」

「だって、諸住さんは俺とイイ仲になりたいって言ったじゃん」

「いえ、あの、それは」