彼には「気にしないで下さい」ともう一度言い、箸の先でお好み焼きを摘まんだ。


「そういう自分の気持ち直ぐに隠そうとするところがいけないんだ。だから、君は皆に良いように扱われる」


言いたいことがあるなら言って、と催促される。

私はそれを聞きながら唇を噛み締め、この人みたいに自信を持って生きれたらいいのに…と考えた。

そしたら、人の目も気にしないで済むんだ。

あんな子供の頃のトラウマに囚われずに、正々堂々と人生を楽しんでいける……。


(……でも、そういうことは直ぐには出来ないから)


だったらせめて、今だけでも本音を話そうかと彼を見上げる。

斜め上から降り注がれる視線にドキドキして、小さな声で「あの時は…」と話しだした。


「ちょっとガッカリしたと言うか、坂巻さんがクールで素っ気なくて、私が言いたいことを全部言わないうちに、言葉を返してきたから言えなくなって…」


ああ、もうこれ完全に嫌味だ。
憧れの人に嫌味を言うなんて、私は本当に最低。


でも、彼が言って…と言ったんだから。
それで、私は今、本音を話そうと決めたんだ。