「えっ?…ああ、あれはいつも適当に返事してるからそう思われているんだろ。俺が女子の誘いに一々全部乗ってたら、自分の時間なんて持つ暇がなくなるよ」


さらりと言い退けて、何処へ行く?と訊いてくる。
私はぐっと息を吸い込み、何処に…と言われても思い付かず__。


「ど…何処にでも…」


安易に返事をしたのがマズかったのか、彼がニヤリと笑った。


「何処でもいい?そう言われると食事も吹っ飛ばすかもしれないよ」

「えっ」

「冗談」


ハハハ…と笑い飛ばしながら歩き始める。

私はドギマギしながらも彼の言うことを真に受けてはいけないと思い、冷静に…と心の中で呟いてから後を追った。



ガッツリとした物を食べようと言う坂巻さんは、私を連れてお好み焼き屋へ入った。
営業帰りとかにも立ち寄る店らしくて、店員達とも顔見知りの様子だった。


「今日は女連れかい?珍しいな」


お好み焼き屋の大将は捻りハチマキを額に巻き、熱い鉄板を前にして言った。
鉄板からは熱のこもった湯気が舞い上がり、香ばしいソースの香りが漂っている。


「こっちにおいで」