駅チカの本屋さんへ向かうと、坂巻さんはタウン誌を片手に真剣な表情をしている……。


(どうしよう。声かけづらいな)


そもそも側に寄りづらいと遠慮していると、気配に気づいたらしい彼が振り向いた。


「やあ」


すんなりと声を掛けられて戸惑う。

この前のようなクール過ぎる彼とはまた別な雰囲気で、オドオドとするやらドギマギするやらで落ち着かない。


「昼間はごめん」


近寄ってきた彼は思いがけず謝った。
その彼から目が離せず、ポカンとしたまま見つめた。


「要らないこと言ったかなと思って反省したんだ。でも、あー言わないと、また諸住さんは残業する羽目になってただろ」


それは困ると呟く彼に瞬きを繰り返し、どうして…と囁くような声で訊いていた。


「だって、今日は最初から一緒に食事しようと言ってたじゃないか」

「でも、あれは気紛れなんじゃ…」

「気紛れ?誰がそう言った?俺はそんなこと一言も言ってないよ」

「だけど、坂巻さんのグループの人が…」


ハッと思って口籠る。
今のが悪口みたいに聞こえてたらどうしよう。