「あんこ、宿題見せてくれよ」

「はぁ？私はあんこじゃなくて杏だってば！」


ケンカ友達みたいな感じだけど仲が良かった。
忘れ物を貸したり前の晩に観たテレビの話をしているうちに、少しずつだけど距離が近づいていった。


……だから、私は勘違いをしたんだ。
彼と私が、特別な関係みたいに思えてしまった。


その頃、仲が良かった後輩がいて、何となくあいつが気なるんだよね…と教えた。
彼女は彼と同じバレー部で、「あの先輩ですか！？」と声を上げて驚いた。


「先輩ってすっごくモテるんですよ。話しかけられたら皆ラッキーだって喜んでるくらい！」


そんな相手と毎日話してると言うと羨ましがられた。

結構部活ではクールなんだと聞かされ、「ウッソー！あいつが！？」と、こっちがビックリするような話も聞いた。


「先輩の前では別人みたいですね。なんだか同じ人とは思えない」


それで私はますます何処か勘違いをした。

自分に見せる顔が他の人とは違うと言われ、彼が見せてる自分への顔が特別なんだろうという意識を持った。