憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!

デスク上にあったものを受け取り、ニコニコ顔で課長の席に届ける先輩。

さも自分がしました的な感じで渡し、それを見つめながら私は少し恨めしくなる。


(こっちは遅くまで残業して、他の女子から疑問を持たれたりして怖かったのに……でも、まあ役に立てたのならいいけど…)


別に一人で頑張ったわけじゃないからいいんだ…と思い、自分を慰める。

謝ってばかりいると周りから舐められるよ、と言った人の声が頭の中を掠め、それでも周りから嫌われるよりかはマシだと思いつつ仕事へと入った。



午前中、坂巻さんは取引先に直行したらしく出社してこなかった。
私は彼が来ないというのを耳にして、安心しながら仕事を進めた。


憧れの人が部署内にいないのにホッとするなんて変だ。

でも、昨日自分に笑いかけてくれた人が、他の女子と話したりするのを見なくてもいいから、それだけは何だか安心出来た。


あの笑顔で他の人と笑い合ってるのを見るのは辛い。

ずっと自分だけに話しかけてくれて、笑顔を見せてくれたらいいのに__。



(バカね杏。そんなの出来る筈ないじゃん)