火曜日の朝は、月曜日以上に緊張して出社した。
営業二課のドアを開けると、既に数人の社員が来ていて__。


(……ほっ。坂巻さんはまだだ…)


何故だかそれを知ると安心できた。
彼が先に出社していたら、どんな顔で挨拶しようかと迷うところだ。

デスクに向かうと昨夜二人で仕上げた会議資料が目に入った。
それを頼んだ先輩に預けるつもりでいたら、外から入ってきた数人の女子が私の所へやって来て。



「ねぇ、諸住さん」


最初に話しかけてきたのは坂巻さんと同じ営業グループの人だ。
私は思わず身構えてしまい、震え出しそうな声で「はい…」と返事した。


「昨夜、坂巻主任と二人で残業したの?」


不意に聞かれ、ドキン!と胸が鳴る。
やはり気づかれた…と焦り、でも、悪いことをしていた訳ではないから、と自分に言い聞かせて手を握った。


「そうです。私がしていた仕事を主任が手伝って下さって」


手元にある資料に目線を落としながら弁解する。
こんな事さえなければ、彼と二人にはならなかったと言いたげに。